七月例会(第四百九十二回)
    (平成二十三年七月十四日)

息の合ふ新郎新婦の二重奏「翼をください」に拍手のつづく(鈴木寿美子)

今あそこ風の行く道葉桜の枝のたうちて津波を思う(後藤清子)

古き巣にちゃっかりツバメが住みつきて四羽のヒナに餌をはこびくる(井上秀夫)

南国の土佐に名画の庭のありモネのこだわり睡蓮の池も(河野かなゑ)

梅の実の二十ばかりや梅花仏友は背伸びし木を二廻り(井上まさよ)

彼は神に私は仏に感謝して半世紀ぶりの友と出逢いぬ(鈴木芙美子)

演歌好きの兄の通夜にはフルートのメロディー流れありし日浮かぶ(古田司馬男)

紫陽花は梅雨空の下いきいきとピンクの花つけ青蛙もおり(丸山節子)

何眺めどんな風うけ実りしや漬けゆく手もとに梅の香広がる(安田武子)

ケイタイでミスするわれらの欠点をつかんで教える子は怒らずに(出町昭子)

朝顔の茎の後ろに亀虫は身を回しして欺きみせる(梅村成佳)

原発の事故で苦悩の日々続き電力株価の下落のつづく(久野高子)

校歌歌う女子高生のコーラスが十八歳へ吾を引き戻す(長瀬武司)

十薬の花しろ白と畑隅に花季いっぱい引くのは止そう(小原千津子)

笠ヶ岳残雪描く白い馬今年も見たくて飛騨路を辿る(大西富士夫)

この頃は暗きニュースの多い中スーパーパソコン世界一位に(加藤朝美)

八十代半ばとなりしこの我の家移りするなど思ひもよらず(佐野きく子)

念仏を素直な心でとなえたし梅原をよみ本願寺に行く (横山 稔)

リハビリを受けても指先ままならず靴を履くにも焦りを感ず(福田時子)