六月例会(第四百九十一回)
    (平成二十三年六月九日)

被災地は新たな悩み限りなし我変わりなく寝坊している(鈴木寿美子)

さ庭べのあちらこちらに福寿草灯りをともす家族のように(後藤清子)

新緑に揺れいる白きハンカチのその一枚をそっといただく(井上秀夫)

稲葉山を黄金で飾る椎の花匂いも乗せて夏を知らせる(大西富士夫)

三つ四つ咲きたるサツキ愛しむ父さんそちらも花咲きましたか(井上まさよ)

「雪みたい」幼なの声に足を止めおしゃべり始まるなんじゃもんじゃの下(安田武子)

やれ刈るなキジがいきなり飛び立てり草の中には卵が五つ(長瀬武司)

拳にて涙をぬぐう男泣き育てし牛との悲しき別れ(丸山節子)

萌え黄いろ命湧くいろ初夏のいろ磨墨の里の山が笑えり(横山稔)

我のみが病あがりの不安感じリハリビをする日々が続けり(福田時子)

ソロバンで億の計算出来た人子供返りで何もわからず(加藤朝子)

親の年越えて八十路に近づけり今年も庭に芝桜咲く(河野かなゑ)

人一倍暑さに弱い夫ゆえ今年の夏の節電案じぬ(小原千津子)

けろけろと青蛙鳴き黄楊の葉にとかげ顔出すあたりまえがよし(出町昭子)

にこにこと笑顔の老女を押す人の疲れし様子で急ぎ過ぎゆく(久野高子)

故郷のうた麦笛の聞こえくる転校児童仲間にありて(梅村成佳)

庭先の花つぎつぎと咲き誇り病み上がりのわれを癒してくれぬ(佐野きく子)