追いやりし野良の子猫がしきりにも気になりだしぬ雪積る夜(鈴木寿美子)
玄関の夫に待ってとチョコ一粒皮むいて出すバレンタインデー(出町昭子)
「若竹」の声のかかりて歌をよむ力いっぱい八十路を生きる(梅村成佳)
パリーグに期待の新人入団す今後の試合満員になるか(加藤朝美)
冬枯れの庭に三株の福寿草土持ちあげて春を窺う(大西富士夫)
七階のわが窓時おりよぎる鳩群に一羽の白鳩混る(鈴木芙美子)
住民の心の底に訴えてアッと言わせし市議会解散(井上秀夫)
二年かけ改修したる競技場の正面入り口に夕陽イッパイ(後藤清子)
言ふほどに「自分のためでしょ」小沢さん言はずもがなの「国民のため」(横山稔)
反応の鈍くなりたるこの頃は人の名聞けどパッと浮ばず(丸山節子)
相続税のセミナーあると誘われて 終りの拍手にはっと目が覚む(久野高子)
在りし日の会長室の窓仰ぎ嗄れ声を思い浮かべる (長瀬武司)
冬の扉を開けて巷に出でゆかん淡き黄色のブラウスを着て(河野かなゑ)
山の墓へ墓石業者を伴へり膝かばひつつ這ふごとくゆく(佐野きく子)
梅ヶ香を震わすあまたの囀りは幼が競う鶯の笛(安田武子)