三月例会(第四百八十八回)
    (平成二十三年三月十日)

追いやりし野良の子猫がしきりにも気になりだしぬ雪積る夜(鈴木寿美子)

玄関の夫に待ってとチョコ一粒皮むいて出すバレンタインデー(出町昭子)

「若竹」の声のかかりて歌をよむ力いっぱい八十路を生きる(梅村成佳)

パリーグに期待の新人入団す今後の試合満員になるか(加藤朝美)

冬枯れの庭に三株の福寿草土持ちあげて春を窺う(大西富士夫)

七階のわが窓時おりよぎる鳩群に一羽の白鳩混る(鈴木芙美子)

住民の心の底に訴えてアッと言わせし市議会解散(井上秀夫)

二年かけ改修したる競技場の正面入り口に夕陽イッパイ(後藤清子)

言ふほどに「自分のためでしょ」小沢さん言はずもがなの「国民のため」(横山稔)

反応の鈍くなりたるこの頃は人の名聞けどパッと浮ばず(丸山節子)

相続税のセミナーあると誘われて 終りの拍手にはっと目が覚む(久野高子)

在りし日の会長室の窓仰ぎ嗄れ声を思い浮かべる (長瀬武司)

冬の扉を開けて巷に出でゆかん淡き黄色のブラウスを着て(河野かなゑ)

山の墓へ墓石業者を伴へり膝かばひつつ這ふごとくゆく(佐野きく子)

梅ヶ香を震わすあまたの囀りは幼が競う鶯の笛(安田武子)

文通を続けし頃の姉の文いつも終りは「俊さん大事に」(小原千津子)