二月例会(第四百八十七回)
    (平成二十三年二月十日)

寒き朝思い出すのはバラックの吹きさらしの土間雑炊の鍋(出町昭子)

全国に広がる善意の贈り物タイガーマスクの波紋いくつか(河野かなゑ)

川澄みて楮が里の寒ざらし両手赤みて垂らす鼻水(長瀬武司)

一片の風花ふうわりふうわりと舞い来て君の肩の辺に消ゆ(井上秀夫)

思い切り好きなこともせず老いたりと良妻賢母の友の嘆きぬ(鈴木芙美子)

雀らの総会会場として賑わいしアカシヤの木切られてしまいぬ(後藤清子)

暖かな心のこもったランドセル背負う子達の門出を祝う(丸山節子)

窓の外猫鳴きながら走り去る春の出番を促すように(大西富士夫)

就活にアルバイトにと忙しく孫の帰宅は深夜となれり(加藤朝美)

つなぎ終え駅伝選手の顔蒼し誇れよ五人ごぼう抜きしを(横山稔)

歳末に現れ出でし「伊達直人」ランドセルに子らは希望を持たむ(鈴木寿美子)

流氷の映像見つつ思ひ出づ夫と行きたる三泊の旅(佐野きく子)

小さき指上下左右に動かしつつアイパットだという五歳だという(久野高子)

家計簿に書けない費え正月の娘親子に小声で渡す(梅村成佳)

窓の露素手に拭えば青い空白く輝く伊吹峰見ゆ(安田武子)

入れ忘れし洗濯物の両肩に霜しろ白と朝の陽返す(小原千津子)

若竹の歌と別れてもう何年また仲間入りして言葉たのしむ(田内八重子)