一月例会(第四百八十六回)
  (平成二十三年一月十三日)

のどかなる橘寺の庭に咲く白き芙蓉に太子を偲ぶ(井上秀夫)

イトカワより宇宙の砂を持ち帰る「はやぶさ」の成果映像に見る(河野かなゑ)

送られし京生麩にやさしさ味わえり亡き叔父叔母のやさしかりし味(出町昭子)

組替えをして新しき顔に会うグランドゴルフに広がるわれの輪(鈴木寿美子)

くけ台に座して綻び縫う妻はありし日の母の姿となりぬ(長瀬武司)

屹度来てきっときてよと念を押しし姉の願いは宙に浮きたり(梅村成佳)

十余年通い馴れたる美容院老々介護の話がはずむ(鈴木芙美子)

寂しくともわれは気楽とうそぶきて深夜独りの湯に浸かりおり(佐野きく子)

皴しわの顔も体もそのままでゆず湯につかり健康願う(丸山節子)

赤白のさざんか千両華やげり孫の婚活持ち越すらしき(久野高子)

今年こそ災いもなくよい年に赤き南天初日に光る(加藤朝美)

いっせいにマラソンゲートを飛び出して女子駅伝の一団のゆく(小原千津子)

恥もなく私事恐縮とことわりて目出度き賀状に病状を書く(横山 稔)

西空に丸く大きく月沈む明日の月食あるのも知らで(大西富士夫)

針金のような足にてピョンピヨンピョン雀の散歩芝生の上を(後藤清子)

店先のエンディングノート開き見るまだ早い気もし旅行誌求める(安田武子)