十二月例会(第四百八十五回)
    (平成二十二年十二月九日)

西空は明日を約す茜色街灯は冷たきうす青き色(出町昭子)

懸命に地域のために尽くしても空しさばかり募る日つづく(鈴木寿美子)

定例の節目検診から帰り「どうだった」かに妻は微笑む(長瀬武司)

陽に透きて黄金にかがやくイチョウの葉小判となりて散り積りゆく(井上秀夫)

三十年会わぬあなたに声をかけ昔偲びて年賀状書く(鈴木芙美子)

病院の跡地に残る銀杏の樹病む幾人を眺めたりけん(河野かなゑ)

来年の目の保養と決め入院せりもみじの時季の小原のさくら(横山稔)

かつて夫の乗りいし艦と同名のうらなみの映像テレビに見つむ(小原千津子)

秋色の山を求めて飛騨美濃路今年の華は天生峠か(大西富士夫)

欲しいよう言葉の袋欲しいようひまわりにやっと笑っているよ(後藤清子)

我のみが不安を抱きて生きてゐるそんな気がする日々が続けり(福田時子)

みつけたよ水仙の蕾天を向きはやばや咲くか霜月下旬(丸山節子)

友の給びし黄色に輝く花柚子のジャム煮つめゆく独りの夕べ(佐野きく子)

衝突の瞬間何度も目にあまる中国の品を棚にもどしぬ(久野高子)

怒られずあと出しジャンケン続けいてデーサービスに笑いを起こす(梅村成佳)

強風に洗濯物が揺れている あっアンパンマン飛ぶ幼が叫ぶ(安田武子)