十一月例会(第四百八十四回)
  (平成二十二年十一月十一日)

赤ちゃんの靴泣いていしこのベンチちょうど今ごろ秋の夕ぐれ(後藤清子)

嫁に来た当時の農家の暮らし振り頷き合いてコーヒー啜る(河野かなゑ)

その歴史も知らぬ彼女は得々と歌声喫茶の批判続けぬ(鈴木寿美子)

チリの事故救出活動見事なり思い一入神岡の人ら(長瀬武司)

「過ちを改むるのに憚るな」阿修羅の眼が訴えてくる(井上秀夫)

弟より新米届く五号ほど国産松茸つめ合わせして(丸山節子)

暑い夏記録づくめの自然界熊が生死の異変に出合う(梅村成佳)

囲碁にても一眼のみでは生きられぬわれは生きたし二眼の生き物(横山 稔)

定年で出番失うネクタイは捨てられもせず箪笥に居直る(大西富士夫)

五十年ぶりの大豊作と伝えきく国産松茸口に入るか(加藤朝美)

さくさくと刻めば緑の星になり体に良いとオクラは光る(安田武子)

同窓会の報せ届きぬこれからも続けるか否かアンケート入れて(小原千津子)

木彫りなる起き上がり兎届き来て来年の干支に気付きたるわれ(佐野きく子)

コツンコツン廊下にひびく杖の音ゲゲゲの妖怪 秋深まりぬ(久野高子)

予定なき日が続きをり用つくり記してみても中々行けず(福田時子)

来年は来られないかと思いつつコンサート果てし夜の道帰る(鈴木芙美子)

スプーンに豆乗せるのが楽しくてわが煮豆食むオイシイの顔(出町昭子)