八月例会(第四百八十一回)
    (平成二十二年八月十二日)

水張田に仲よく遊ぶ二羽の鴨近くを歩む我に気付かず(河野かなゑ)

庭の樹の茂みに生れし百舌のヒナわが子のごとし元気に巣立て(井上秀夫)

彩りをさまざま変えて明けの空煮えたぎるごと陽は昇りくる(大西富士夫)

友よりの電話に心癒されぬ体調悪きひと日の暮れに(鈴木芙美子)

土用入り梅干さむとする庭先に蝉鳴き始む三重奏に(出町昭子)

待つようにおくやみ欄に目が走るおのずと年の差調べんとする(梅村成佳)

息凝らし聞き入る親子に空襲の火の海さまよう恐怖を語る(安田武子)

足腰も衰え家にこもる日々テレビに見入る欧州の旅(林 志げ)

大暑過ぐなお念力のためされて死者十八人岐阜と愛知に(横山 稔)

平和の鐘ごーんおんおんなりわたり北朝鮮までとどけと思う(後藤清子)

大雨の爪あと残る山崩れニュース幾たびも故里映す(小原千津子)

百年に一度の豪雨の可児川よ何を怒るか人を呑み込む(長瀬武司)

お年です医者のひと言淋しかり夕顔の花白々と咲く(福田時子)

消費税は先送りらしされど先へ送れぬ病もつ身のわれは(久野高子)

早朝に一人ゆったり展望風呂故郷の景色に癒されている(丸山節子)

公用語をすべて英語にすると楽天よ戦中派の吾にはチンプンカンプン(加藤朝美)

入院中のわが身外出許されて杖つきしまま喪主つとめたり(佐野きく子)

イヤホーンにて説明聴きつつ「勧進帳」にあらためて知る歌舞伎の深さを(鈴木寿美子)