六月例会(第四百七十九回)
    (平成二十二年六月十日)

おかしくて腹をゆすって「アッハッハ」舞台にくい入る素のままのわれ(横山稔)

日本語を上手に話す母と子のこの地に馴れしか笑みて会釈す(鈴木寿美子)

宮島の大鳥居見つつしばらくを鹿とたわむる船の出るまで(井上秀夫)

金色に椎の華咲くお城山金華という名の由来とぞ聞く(河野かなえ)

いつまでも覚えられない太極拳みんなで笑い再見(ツアイチェン)で終わる(鈴木芙美子)

吾子見舞う胸に居座る重きもの帰路ただ祈る谷川岳にも(安田武子)

はとすずめきじもひばりもカラスさえ異常気象か姿少なし(林志げ)

花の名も忘れしさつき枝先につぼみを持てりせいいっぱい咲く(出町昭子)

ここ数年雀の姿見なくなり生態系の異常起きたか(加藤朝美)

衣替えせし楠の木とピカピカの五月の風の話はなあに(後藤清子)

ヒトツバタゴの真白く清し婚の日に孫の被りしヴェールの様な(小原千津子)

幾年もラジオ体操に通ひたる長良公園見放けつつ恋ふ(佐野きく子)

雨の日は誰とも話さず日が暮れるかっての友らの顔浮かびくる(丸山節子)

韓国語縄綯うようなリズム感現地で過ごした遠い日浮かぶ(梅村成佳)

アマリリス太い花芽の茎のばすやがて大きな花が咲きそう(福田時子)

ねむれない心の裡のこだわりに下弦の月もいつか満ちくる(久野高子)

落葉松の芽吹き新たな登山口今年もやれそう靴締めなおす(大西富士夫)