花の旅今年も来れたと二人して吉野の山の展望台に立つ(河野かなゑ)
歌集いらぬといいし友あり立つ位置のそれぞれの違いをあらためて知る(鈴木芙美子)
水嵩の増す鳥羽川を流れゆく桜は花の役目を終えて(大西富士夫)
みずからを「遅筆堂」などとへりくだり ひさし氏は逝くことだま遺して(横山稔)
しだれ桜咲きつづくみち三歳の亡き吾児の手を誰がつなぎゆく(出町昭子)
池の面人影にしき散り積もる桜花びら風に連れられ(安田武子)
基地問題どうなるのかな鳩山政権刻容赦なし 若葉の香る(小原千津子)
沖縄の基地論うにわれ思う逃げ惑いし彼の女学生らを(梅村成佳)
内閣の支持率ますます下降という基地反対の鉢巻集う(久野高子)
めでらるることを知らずにすごし来し山のさくらの初々しかり(後藤清子)
手巻寿司仲間に振舞ひ元気よく無事に帰還の宇宙飛行士(加藤朝美)
筍をゆでれば甘く匂いたつほのぼの温し屋内に香る(丸山節子)
預りて世話する人に礼を言ひ愛しの猫をケイタイに見る(佐野きく子)
一分間の片足立ちは長きかな病める足にはいっそう長し(福田時子)
四歳の子のしくしくと泣きじゃくる大きいじいじとお別れいやだと(鈴木寿美子)