四月例会(第四百七十七回)
        (平成二十二年四月八日)

百分の二秒で逃げた金メダル女子パシュートにリンクどよめく(河野かなゑ)

対策の遅れなどとは責められぬ人ごとでなし介護の現場(ホーム火災)(鈴木芙美子)

ヒショヒショと春よぶ雨の日もすがら山もお城もふくれて見ゆる(後藤清子)

ひと束の水仙の香り部屋に満つ春を纏いて雪景色描く(安田武子)

山が生み山が育てた分校の校舎は壊され豌豆の咲く(梅村成佳)

Tシャツの青年の手のしなやかに二十五絃の琴を奏でる(鈴木寿美子)

昨日でき今日は出来ないこと多し十秒間の片脚立ちなど(小島美年子)

質草となった子孫に頼んだか 借金まみれの九十二兆を(横山 稔)

玄関に友の声して開けしとき風が連れ来ぬ沈丁花の香(久野高子)

与野党のゴタゴタ続きにうんざりす天の怒りか夜更の春雷(加藤朝美)

待ちくるる友ありわが歌続けたり「若竹第四歌集」手に受く(林 志げ)

前書きの「歌集は心のアルバム」を形見と言いて子らに渡せり(小原千津子)

「どうしてた」問ふてもみたし其の味も忘れてしまった島根産にしん(出町昭子)

「仰げば尊し」聞けぬ卒業式それぞれの歌われはなじめず(丸山節子)

強風に黄砂来たりて空かすみ山は黄色にかすんで見える(福田時子)

翁草とほき日に見し歌集読み白寿の翁に株分ちたり(佐野きく子)

石松に出会う気がする富士川のかりがね堤手をふり歩けば(井上秀夫)