柴もやし五右衛門風呂たく煙たさの懐かしきかも野焼きの匂い(大栗紀美子)
聞き慣れしコンセプトだけの岐阜市ゆえ「新味」探りぬ公開討論に(横山 稔)
冬枯山の寂しき景色に華が舞う成人式終えし振り袖の娘たち(安田武子)
買う気なく話しかければ絵の値だん半値の六掛けまだまだ下がる(井上秀夫)
死に近き人を見舞いて帰る道スーパーに寄り夕餉の魚買う(鈴木芙美子)
あの山を越せば居そうな青い鳥夢につなげる東雲のいろ(大西富士夫)
この旨さにはまってしまい採りたての大根を切り寒風に干す(小島美年子)
凍てしるきわが庭先の水がめに日の射し来れば金魚らゆらぐ(佐野きく子)
冬の夜は家族揃いて火鉢にて赤き手かざし一日を語りき(加藤朝美)
大雪が残れどわれは幸願い初詣にと足をはこびぬ(丸山節子)
井の中のかわずの如き教えうけ宇宙時代の世の中に浮く(林 志げ)
裸木となる公園の梢高く見張るはもずか共にゆれつつ(出町昭子)
一筆の添書に心通ひ合ふ年に一度の賀状の友よ(鈴木寿美子)
お互いの呆け防止にと続け来し便り絶えたり長姉九十二歳(小原千津子)
初鏡幾度も笑顔作れどもどうにもならないしわくちゃ笑顔(後藤清子)
「当せん」と朱書く年賀の一枚は北朝鮮から共に帰り来し友(梅村成佳)p>
久びさに会いたる友はくりかえし聞こえにくいと言いながら話す(福田時子)
庭先の蝋梅今を咲きさかり何を思ふか重たき黄色(河野かなゑ)