二月例会(第四百七十五回)
(平成二十二年二月十一日)

柴もやし五右衛門風呂たく煙たさの懐かしきかも野焼きの匂い(大栗紀美子)

聞き慣れしコンセプトだけの岐阜市ゆえ「新味」探りぬ公開討論に(横山 稔)

冬枯山の寂しき景色に華が舞う成人式終えし振り袖の娘たち(安田武子)

買う気なく話しかければ絵の値だん半値の六掛けまだまだ下がる(井上秀夫)

死に近き人を見舞いて帰る道スーパーに寄り夕餉の魚買う(鈴木芙美子)

あの山を越せば居そうな青い鳥夢につなげる東雲のいろ(大西富士夫)

この旨さにはまってしまい採りたての大根を切り寒風に干す(小島美年子)

凍てしるきわが庭先の水がめに日の射し来れば金魚らゆらぐ(佐野きく子)

冬の夜は家族揃いて火鉢にて赤き手かざし一日を語りき(加藤朝美)

大雪が残れどわれは幸願い初詣にと足をはこびぬ(丸山節子)

井の中のかわずの如き教えうけ宇宙時代の世の中に浮く(林 志げ)

裸木となる公園の梢高く見張るはもずか共にゆれつつ(出町昭子)

一筆の添書に心通ひ合ふ年に一度の賀状の友よ(鈴木寿美子)

お互いの呆け防止にと続け来し便り絶えたり長姉九十二歳(小原千津子)

初鏡幾度も笑顔作れどもどうにもならないしわくちゃ笑顔(後藤清子)

「当せん」と朱書く年賀の一枚は北朝鮮から共に帰り来し友(梅村成佳)

久びさに会いたる友はくりかえし聞こえにくいと言いながら話す(福田時子)

庭先の蝋梅今を咲きさかり何を思ふか重たき黄色(河野かなゑ)

初音という椿の紅に和まされやわき茶の香の空に広がる(久野高子)