一月例会(第四百七十四回)
(平成二十二年一月十四日)

そう言われうなずきている嫁もらうことは即ち嫁に出すこと(河野かなゑ)

今夜は星一ぱいだよと夫帰る仰ぐ星空 視力健在(出町昭子)

亡くなりし母の名札を書き替えて郵便受けに足して連なる(梅村成佳)

行く道の垣根の外に南天の実の艶やかに赤き実見せゐる(鈴木寿美子)

目をあけば天井廻るぐるぐるとまろびつつ呼ぶ ああ夫がいる(大栗紀美子)

つぎつぎと事業仕分けは進みゆくランチのメニューはなかなか決まらず(井上秀夫)

紅葉と瑞垣なせる里山を真白に染めて今朝の大雪(林 志げ)

気の重き知らせばかりの年の瀬に孫の婚の日決まりし知らせ(小原千津子)

そりゃねえばあばばあばと言われたらついほころびてしまうんだよね(後藤清子)

ことことと煮込んだ昆布巻孫達はやわらか過ぎて気持悪いと言う(丸山節子)

家の回り二十糎の雪降りぬ夫送らんと雪を掻くわれ(佐野きく子)

指呼の間に山頂望む急坂の胸突八丁 足は鉛に(大西富士夫)

認知症になったかしらと言いあいてわが三姉妹の短かき秋の日(鈴木芙美子)

「取り掛かれば半ばを成せり」と言いながら年の瀬トイレみがきに掛かる(小島美年子)

この年の笑顔と健康祈りたり吹きとんで行け不況の風よ(加藤朝美)

初夢が時にうつつになりて欲しわれのショットは二百ヤード過ぐ(横山 稔)

この頃のカタカナ言葉の氾濫になずさつまずき新春迎う(安田武子)

ごめんなさいと言ってしまえばいいものをすぐには言えぬわがあまのじゃく(福田時子)

中止廃止存続などと仕分け人 暮らしどうなるフィクションにあらず(久野高子)