十二月例会(第四百七十三回)
(平成二十一年十二月十日)

野火の立つ刈田のかなた小島山残月背負いともにゆらめく(大西富士夫)

心癒す瀬音聞きつつ上ノ町歩く二人の影ながくなり(安田武子)

義経の可笑しき逸話聞かせつつ笹川流れの船は進みぬ(井上秀夫)

期待外れの孫らの反応拾い来し椎の実気負いてわが炒りやるに(大栗紀美子)

生きんとて「思考の整理」が見直さる筑波なつかし滋比古先生(横山 稔)

訴えし一票一揆の成果なり税金の使途おもてに出でぬ(鈴木寿美子)

おっぱいだけで育ちたるマー君丸々と重たいのなんのお話も出来(丸山節子)

省庁の事業仕分けの公開に両者のやりとり新鮮なりき(加藤朝美)

芸妓連の舞しっとりと信長も明るく賞でゐむ駅前広場(出町昭子)

二人して体験して来し施設には老十五名明るく笑まふ(佐野きく子)

今は友の形見となりぬ柄の反れる錆びし備中わが手に握る(梅村成佳)

三時間待ちて阿修羅の像に会い合掌しつつも消えぬこだわり(久野高子)

幼なき手丸めしだんごの不揃いを十五夜お月さん笑ってござる(後藤清子)

「ウエルかめ」朝のドラマのほのぼのと心温とく一日始まる(小原千津子)

口きけず手袋はめられ老いし人おなかにチューブで食べさせられて(林 志げ)

わが庭の小さな蜜柑大きくなりオレンジ色に朝の陽を受く(福田時子)

枯菊を燃せば香のある煙たち背筋のばしつつ行方目に追う(小島美年子)

職業を主婦と書きたる日もありき今は無職の自由人なり(鈴木芙美子)

松蔭の生家の庭に歌碑ありて親思う心子を思う心(河野かなゑ)