野火の立つ刈田のかなた小島山残月背負いともにゆらめく(大西富士夫)
心癒す瀬音聞きつつ上ノ町歩く二人の影ながくなり(安田武子)
義経の可笑しき逸話聞かせつつ笹川流れの船は進みぬ(井上秀夫)
期待外れの孫らの反応拾い来し椎の実気負いてわが炒りやるに(大栗紀美子)
生きんとて「思考の整理」が見直さる筑波なつかし滋比古先生(横山 稔)
訴えし一票一揆の成果なり税金の使途おもてに出でぬ(鈴木寿美子)
おっぱいだけで育ちたるマー君丸々と重たいのなんのお話も出来(丸山節子)
省庁の事業仕分けの公開に両者のやりとり新鮮なりき(加藤朝美)
芸妓連の舞しっとりと信長も明るく賞でゐむ駅前広場(出町昭子)
二人して体験して来し施設には老十五名明るく笑まふ(佐野きく子)
今は友の形見となりぬ柄の反れる錆びし備中わが手に握る(梅村成佳)
三時間待ちて阿修羅の像に会い合掌しつつも消えぬこだわり(久野高子)
幼なき手丸めしだんごの不揃いを十五夜お月さん笑ってござる(後藤清子)
「ウエルかめ」朝のドラマのほのぼのと心温とく一日始まる(小原千津子)
口きけず手袋はめられ老いし人おなかにチューブで食べさせられて(林 志げ)
わが庭の小さな蜜柑大きくなりオレンジ色に朝の陽を受く(福田時子)
枯菊を燃せば香のある煙たち背筋のばしつつ行方目に追う(小島美年子)
職業を主婦と書きたる日もありき今は無職の自由人なり(鈴木芙美子)p>