十月例会(第四百七十一回)
(平成二十一年十月二十九日)

ヘリ炎上嘗て登りし岩壁の映像アップに心痛めり(大西富士夫)

物資運ぶ大型ロケット宇宙飛ぶわれは徒歩にて鯖街道行く(安田武子)

みまかりし妻に届きた保険証手にした弟じっと見つめる(丸山節子)

金沢の東茶屋街紅がら格子しだれ柳に招かれ歩く(林 志げ)

夜も深き金坂峠に現れしタヌキが車の道案内す(井上秀夫)

雨多き今年里芋伸びやかに葉をゆらしをり子芋も殖えて(出町昭子)

四十五年使ひたりたる応接セット名残りを惜しみ廃棄物とす(佐野きく子)

君が代と長き祝辞と万歳と変革の風はどこ吹く敬老会(鈴木芙美子)

恨み越え許して踊る敦盛の悲しげに見ゆ雅な衣よ(横山 稔)

民主党のズラリ並べしマニフェストかかわるものなくエアコン止める(久野高子)

ピカピカの五月の風とピカピカの樟の若葉の話はなあに(後藤清子)

新政権いかなる政治なしくるる ニュースに混じりしるき虫の音(小原千津子)

独り居はやっぱりつらし金婚の祝いに市より友ら招かれ(小島美年子)

政権が民主党にと交代し高齢者にも優しくなれるか(加藤朝美)

舗装路のでこぼこ見せて水溜る玄関前の澄みし大空(大栗紀美子)

料理好きの奥さん貰う筈だったと独り言いって葱切っている(鈴木寿美子)

刻み足病気持ちたる歩み見て戸惑ひ歩き思ひ浮べる(梅村成佳)

ケイタイの明り頼りにメモを取る目覚めし夜半に歌のはしばし(吉田和子)

紅葉の今だ早かりき高台寺臥龍の回廊霊屋につづく(河野かなゑ)