「春駒」の唄と囃に誘はれて盆の踊りの輪にまぎれたり(井上秀夫)
子や孫に曾孫も増えて賑々し煙ただよふ盂蘭盆の墓(河野かなゑ)
向日葵がかしら右する休耕田米を育てず花でいいのか(大西富士夫)
岐商勝ちFC岐阜勝つうまし夜は勝因ばなしにジョッキが似合う(横山 稔)
墓地に来てしみじみ思う畏れうせ墓碑にぎにぎと懐しさわく(林 志げ)
起きぬけの強張りし身をゆっくりとほぐす体操まじめな顔で(出町昭子)
ひと夏を鳴き崩したる蝉の声マスクした子の登校の列(梅村成佳)
山腹に出会いてコンニチハとすれちがう夜のゴンドラ電飾ともし(鈴木芙美子)
日盛りに選挙の車通り過ぎアオスジアゲハゆっくりと飛ぶ(加藤朝美)
新盆に弔問客は列をなしところかわれば習慣ちがう(丸山節子)
久久の国政選挙の迫り来て胸の高鳴りうねりを感ず(鈴木寿美子)
悲しさは少し遠のき独り居の気の向くままに夜更けのピアノ(小島美年子)
「おいでたかな」笑顔も温とし年越しの支度に帰るふる里は雪(吉田和子)
真っ白な羽根をひろげた鷺草に玉三郎の舞姿たつ(久野高子)
十五日十六人の墓まいり幼が柄杓で水撒きちらす(後藤清子)
介護疲れ癒さんとして庭に出で小賀玉の香に心遊ばす(佐野きく子)
人あたり良いとはこの事公園の芝生がふわっと足裏にやさし(大栗紀美子)
敬老会招待状にため息が暗闇に白き夕顔の花(安田武子)