八月例会(第四百六十九回)
 (平成二十一年八月十三日)

賑わいしイベント広場の真ん中で玉虫色の鳩の求愛(後藤清子)

新しいアンテナあちこち目につきぬ地デジの電波捉えて立てり(河野かなゑ)

象潟の眺海の湯より眺むれば弧を描きたる水平線の見ゆ(井上秀夫)

ねじねじの回廊つくりもじずりは願いを咲かす天に届けと(大西富士夫)

ポストへの二百メートルを車駆る夜目の気がかり私もおなじ(大栗紀美子)

金華山みどり深まり赤色の三重の塔小さくなりぬ(鈴木芙美子)

四十七歳マイナス十度の富士登頂あんなに運動嫌いだった子が(小島美年子)

丹念に母の作りし浴衣解く解きつつ不幸してる思ひす(鈴木寿美子)

日盛りに真赤にもゆる夾竹桃花に放たむこの腰痛を(久野高子)

梅雨末期東に西に災害がおきて今年の梅雨明けはいつ(加藤朝美)

心地よき政策ずくめのマニフェスト試されているわれの判読(横山 稔)

屈む背に消毒器掛けゆっくりと脚立を上る夫を支ふ(出町昭子)

七年を土の中にてやうやくに羽化せし熊蝉猫くはへ来ぬ(佐野きく子)

中帯の網戸に替えて通りくる風新しく吹き抜けてゆく(梅村成佳)

生い茂る狭庭の木々は軽やかな庭師の鋏に明るくなりぬ(福田時子)

硫黄島皆既日食待つ人ら玉砕の事などまったく忘れ(林 志げ)

首斜め離れ近寄り顔しかめ見る抽象画潜める物あり(安田武子)

暑中見舞いに書き添えてあり八百津線通学四人集りたいと(小原千津子)