五月例会(第四百六十六回)
   (平成二十一年五月十四日)

障害と病いくつも併せもつ人はそれでも生きたしと言う(河野かなゑ)

アスファルト押しあげ芽吹くたんぽぽをちらりと見つつジョギングつづく(大西富士夫)

わが足を食べる気のする給付金貰うとなれば嬉しきわたし(鈴木寿美子)

さよならと投げキッスして帰りたりベッドの友もキッスを返す(鈴木芙美子)

高速道どこまで行っても千円に云わなくてもいいの? エコのことなど(児島美年子)

山峡の墓前に花を供ふれば松風にはかに騒めき立ちぬ(井上秀夫)

花びらも背負いて帰る一年生おろす間惜しく「ねぇーねぇー聞いてよ」(安田武子)

スカートの裾ひるがえしペタル踏み若葉の道ゆく高校生ら(小原千津子)

いまここが風の道らし樟のゆずり葉バラバラ地面にこぼるる(後藤清子)

職退きてはや二十年経ちにけりそろばんタイプ物置にある(林 志げ)

数日を断食続け臥せている隣から来る煮物の匂い(丸山節子)

少年の篳篥少女の笙の音が読経と共に堂にひびけり(久野高子)

暮れ落ちむ空に子を呼び鳥ゆく流れ者朱鷺にかかる声無し(出町昭子)

野ぶどうの鷲掴みした夢支え節々の芽は見分けのつかず(梅村成佳)

レントゲンを見て主治医言ふ十年は大丈夫ですよ貴女の寿命は(福田時子)

洗濯もの風の押すまま おおおおお護衛艦出でぬ先達として(大栗紀美子)

円空の命を絶ちし池尻に友等と集いひねもす語る(加藤朝美)

下校する児童らわが家の猫見つけ思ひ思ひに戯れてゆく(佐野きく子)

大八洲の石碑の八の字の奥に御霊還れと蛙彫るとは(横山 稔)