二月例会(第四百六十三回)
 (平成二十一年二月十二日)

親族らの愛をいっぱい受けているこの嬰児の未来安かれ(河野かなゑ)

目にキズミはさみて時計を修理する父の横顔ふいに浮かび来(井上秀夫)

風のなか微かな旋律ひな祭り戦火の奪いしわが雛恋し(安田武子)

常日頃ピンピンころりを願いおりさあ出掛けよう朝の散歩に(丸山節子)

「頑張るねぇ」よちよち走る子を褒めるママに振向く幼なの瞳(大栗紀美子)

二人してよく頑張った宮守の終りて憩ふ下呂の湯の宿(鈴木寿美子)

「ああ家が一番いい」と独りごつ三日の入院より戻りきて(小島美年子)

三田洞の展望台に見はるかす雪にかがやく伊吹と白山(佐野きく子)

日記帳たった三行で足る暮らし簡素なれども侘しさ残る(鹿野たつ子)

つつがなく二歳になりぬ かずま君やんちゃなれどもいいではないか(後藤清子)

月明りの昨夜に変りて今朝の雪先ず雪拂う花のプランター(小原千津子)

賑やかにへの字りの字で下校する子ら見送りて役目を果たす(梅村成佳)

庭先のしだれ梅の木を遊び場にひながたわむる雀一族(林 志げ)

山脈の彼方に白眉の山見えて冬のあしたの新たな発見(鈴木芙美子)

百五歳六百二十四字「天声人語」日露戦では主戦論なりき(横山 稔)

リハビリで痛みもやわらぎ歩くのもようやく元の体に戻る(福田時子)

オバマ氏に期待しているテロもなく差別もなくて平和な世界(加藤朝美)

孫からのセンター試験のメールあり百合のつぼみの開くに気付く(久野高子)

中山道の標となれる大榎さま変りせし街中に立つ(出町昭子)