七月例会(第四百五十六回)
        (平成二十年七月十日)

アジア戦追いつ追われつファイナルを植田ジャパンは涙の勝利(河野かなゑ)

麦畑夕日を受けて黄金色波うつ様に風にゆれいる(福田時子)

新緑の山の辺行けば姿なきホトトギス鳴く「ホットモッテコイ」(井上秀夫)

めいめいに小さき鞄を手に持つ子肩に掛けるあり園の遠足(出町昭子)

月一回友とランチを食べながら話しの出来る小さな倖せ(加藤朝美)

あの事もこの前のことも云いたいよ風が押えるしんぼうしんぼう(後藤清子)

ほの暗き道三塚の鎮もりにひとむら明るし紫陽花の青(小原千津子)

鼻寄せて犬ほど嗅いてわれひとり低く歌おう「くちなしの花」(横山 稔)

戦後まで電灯無かりし北山村ランプの火屋を祖父磨きゐき(佐野きく子)

害虫を殺すに心の痛みありわが子の虐待人間に非ず(安田武子)

朝まだき小鳥の囀りさまざまに文字では書けぬ音世界楽し(鈴木芙美子)

披露宴にネクタイつけておむつしてチビッ子紳士は準主役なり(丸山節子)

この木との別れ遠くはなかるべし今年限りのとちの枝切る(梅村成佳)

梅雨最中どったり重い陽が沈むせめて夕餉にワインを添えん(鹿野たつ子)

順番にグランドゴルフの球を追ふよろこびの声落胆の声(鈴木寿美子)

背をのばし腰たたきつつまた屈み玉砂利の上の落葉掃く人(大栗紀美子)

蜜、リカー、紫蘇など五種の梅を漬け汁の上るをわくわくと待つ(小島美年子)

佛壇につやつや赤きサクランボボーナス出たらし子の供えいる(久野高子)

点滴のおちるを眺め窓べに立ちくもりの空より金華山見ゆ(浅野まつゑ)