二月例会(第四百五十一回)
    (平成二十年二月十四日)

雪の夜たたきに座り縄をないムシロを織りし義父の後姿(加藤朝美)

可決して否決しつ更に再可決新テロ対策法捻れて通る(河野かなゑ)

亡き父の十八番懐かし古大尽とち餅嬉し白川の味(安田武子)

ヨコ文字のスナックひしめく路地裏に石焼きいも売る笛の音ひびく(井上秀夫)

プシュプシュプシュカタコトカタッと踊る釜不意に不在の妻を想へり(横山稔)

満月の冴えたる光はおそろしき欠けるを知れと告ぐる思いす(大栗紀美子)

寝たきりの姑手を合せありがとう遠き思い出老いて身にしむ(長谷川和代)

回り持ちの班長の役「出来ますか」いたわられおり念を押されて(丸山節子)

庭先の草の芽ついばむ小雀に猫に用心せよと告げたし(佐野きく子)

光君の髪つや増さむ美男葛色付く葉陰にさんごのかんざし(出町昭子)

縁側に日差しいっぱい閉じ込めて新聞を読む椅子にもたれて(鹿野たつ子)

「エッホント」涙出で来ぬあの人はわたしの中の微笑みの人(後藤清子)

名古屋シティーマラソン完走幼き日ぜんそくありし息子四十五(小島美年子)

寒ブリツアー雀のお宿と云う宿にやっと着きたりつづらを飾る(林志げ)

由布島の水牛車にて兄とわれ島の民謡仲間と唄う(浅野まつゑ)

病院は教へられぬといわれたりプライバシーとは諸刃の剣(鈴木芙美子)

採寸の数値に着る人浮かべつつ型紙つくり仮縫いそぐ(福田時子)

出食わして校長せんせと声が出るスーパーのレジに並んだ列で(梅村成佳)

湯タンポをやぐらコタツに入れながら総理の答弁ひややかに聞く(鈴木寿美子)

くり返す株暴落のニュース切り冬陽に当てしふとんをたたく(久野高子)

酒の量減りて口数減りし夫安けしとおもう淋しとおもう(小原千津子)